もうずいぶん前のこと。母親からの「子どもを助けてほしい」と言う電話で家に向かいました。
薬は止められません。「止めなければ」と思っても、どうしても止められない。
母親とも何回も連絡を取り合いました。家にも何回も行きました。
もうすっかり友達のようになっていた一人の警察官に言われました。
「沓名先生、これはもう民間の先生が解決できる問題ではありません。警察に連絡してください。」
子どもを警察にと言うことは、今までの警察から子どもを守る教育現場にいた時の私の立場が、まさに逆になった瞬間でした。このフリースクールを始めて、最初に私たちが関わった事件でした。
母親と話し合い、警察に電話したのは、私です。
目の前で、泣き叫び、警察に連れて行かれた子ども。
しばらくして、その子どもから手紙が届きました。
「沓名先生、お元気ですか。今少年鑑別所にいます。自分のやったことがどれだけいけないことか、どんなに体に悪いことか、この3日間で知ることができました。一人になるとすごくさびしいです。先生、あの時しかってくれなかったら、自分のしたことがどんなにいけないことかわからなかった。社会からはずれることはもうしない。また手紙を書きます。あ、この便せん、ありがとうございます。しっかり反省して、早く小さな窓からしか見えない月を、もっと大きな外で見る日まで。・・・最後に迷惑かけてごめんなさい。もう17歳なんだから、がんばります」
子ども達を薬に走らせてしまうものは、いったい何なのか。深い闇があります。
今、その少女は幸せに暮らしています。教育現場にいたら見えなかったものが、多く見えてきています。社会の闇も、社会の深いつながりも。