家族から、「あんたみたいなひきこもりが家にいるなんて、世間にみっともなくて」と言われたのを、きっかけに、家族ともめてしまった青年。

 こうしたケースで、殺人にいたったのも最近ありました。青年が強いケース、家族の方が強いケースさまざまです。

 家族だけでは、どうにもならないことが多いです。でも世間体を大切にすると、人には話せず、家族会の中で解決しようとする人もいます。

 ひきこもりの人に、働くことを勧める解決方法と、働くことを勧めない方法が取られています。

私たちは、愛知県からの委託就労支援をしています。「夏は暑いから働くのが嫌です、冬は寒いから働くのが嫌です、土は手が汚れるから、畑作業は嫌です」と言っていた青年が、今は十分に自分で収入を得て、毎日を過ごしています。小学校、中学校は不登校でした。でも自動車免許も取り、どんどん変わっていく青年と過ごした2年間、不登校もひきこもりの言葉はどこにもありません。

学校では話すことも、勉強することもしなかったので、私のところに来たときは「知的障害」と周りの人に思われていました。でも変わったのを目の前で見てきました。

 私は、その人、その人に合った方法を取っています。やはり働く道を見つけていきたいと思っています。「無理」なら仕方ないですが。でも、私はなんか必ず道はあると思っています。

 「沓名先生は、かわいそうな青年を助けて、社会から認められようとしている偽善者だ」と言われたこともあります。一瞬すごくショックでした。でも青年に「ではなぜ、今こうして私に電話して助けに来てくれと言ったの?」と聞きました。深夜の警察官も遠巻きにいる中です。すると泣きながら「だってほかに誰もいないんだもの、沓名先生しかいないんだもの」と答えます。

 この青年に寄り添って、もう10年になります。家族だけでは難しいけど、いつかこの家族も本来の家族関係にもどしてあげたいと思っています。それまでは、やはり「ママさん」でしょうか。

 社会に迷惑をかける生徒もいます。警察から電話があります。なかなか指導が行き届かなく、社会に迷惑をかけてしまいます。「だって家に居場所がないんだもの」と生徒は言いました。

警察に渡す前に、何とかしたかったと後悔の日々です。

 行動的な生徒もいます。やさしい生徒もいます。子ども達、青年に寄り添っています。