生徒たちと、ゆずりは学園の裏手にある、手作りの階段に落ちている椿の実を拾いながら、いろいろなことを話しました。こうして、ひとつの作業をしながら、話す時間から生徒の本音が聞けます。

「僕ね、頼まれたことを断れないんだ」「だから、自分としては違う方向に向かっていってしまう」

「優しすぎると言われる」「だから、そんなに優しいと裏があると言われるけど、裏なんてないんだけど」

「ルールが覚えられないから、いつも負けちゃう」

 他の高校から転校してきました。レポート学習やら、スクーリングやら随分忙しい時間を過ごしました。やっと、落ち着いてきた時です。外は春のように穏やかな日でした。バスケットをやりたいと言う彼に、一緒にいた子も手伝いながら、椿の実を拾い、二人でバスケットをやりに行き、暖かい日差しの中、海への散歩、トトロの民家への散策、高校生活の瞬間を楽しんでいます。

 2月28日、日曜日の新聞に、「無償で勉強を教えます」の記事が掲載されていました。学習の教室があればと書いてありました。早速、連絡を取りました。私たちのゆずりは学園は、学習の場を持っている学校です。無償で、使っていただいて良いのです。無償で勉強を教えてくれる人たちがいます。気持ちがある先生たちがいます。若者がいます。子ども達のことを考えてくれる人がいます。

私が作った学校は、今、形が出来ました。森に頂上までの階段を作り、土地を買い、建物を買い、バスケット場を作り、フリースクール無料化に向けて、動き出しています。

勉強したい子に、学習の場を与えて、それぞれが進む方向に向かって行くこと。

自分の好きな道を見つけて、その才能を生かして、進む。

一生に一度の人生です。好きなことに時間をかけることは、短い人生の中で、大切です。

人間に数字をつけることが嫌で、ずっと抵抗を覚えてきました。

優しすぎて、強いものに命令されるから、問題行動に巻き込まれてしまった生徒。その優しさは、結果として、退学になってしまう。優しさは、優しさです。断らないのが、悪いという評価です。

優しさは彼にとって、欠点になってしまうのでしょうか。人生をうまく生きる政治家たちに、通知表をつけるとしたら、全員1の数字もつけたくないです。「菅さま」と呼ぶ人が、横にいても「大事ではない」という政治家が日本の政治を支配しています。学校時代は、みんな評価が最高だったことでしょう。

悪いことと知っていたのに、「知らなかった」と嘘をつける人たちが、今日本の政治を作っています。

 通知表のない学校、これがやはり理想です。人間に、人間の評価を数字で表してはいけないのです。通知表のない学校を作りたいと思います。どの子も最高です。どの子もすばらしいのです。