広島の原爆で一瞬のうちに、姿もそして名前ですら残せず
生まれたことも、生きていたことも、そして突然の死でさえも
残された家族がいれば、まだこの世界に生きていたことが分かるけど、すべてがないことになってしまったら、どんなに悲しいことか。
ゆずりは学園には、潮風の電話があります。
もうすぐ、彼女の命日です。
彼女との思い出は、記憶はたくさんあります。
多くは笑わない少女でした。
好きな歌手のコンサートに、よく叔母さんと行っていた。
笑い、拍手をし、興奮し・・・・
それでも、この世界に彼女が心から身をゆだねる居場所は無かったのですね。
過日、彼女と一緒にフィリピンを旅した仲間が来ました。
そんな時、彼女の姿をもう見ることはできないけれど、
また声も聞くことはできないけれど、
そう言って、もう一人の仲間が
体に刻まれた入れ墨を見せてくれました。
「ほら、ここにあの子がいるから」
彼女の命日と名前がはっきり彫られています。
そして、そこを撫でながら、いつも一緒にいると言いました。
生まれたことも、生きていた時代の日々も
そして、姿が見えなくなった日からも
確かに、一緒に生きていた時間があることを
私も仲間も家族も忘れません。