中学生の時から、通ってきている子がいます。幼い顔だった子が、もう背も伸び、声も青年になり、学園が終わりそうな時間になってから、「ママ まだいる?」と聞いて来たり、ふと手を見ると、また噛んで無くなっている爪があります。

 明日は、もう卒業です。元気でいてください。甘えたい時には、いつでもメールしてきていいよ。ママさんはいつもここで待っているから。大きくなったのに、心の中でいつも、「母」を求めています。本当のお母さんのことも好きです。でも、何か甘えられない。「なぜなのでしょうね」と言います。お母さんも子どものことが好きです。良いお母さんです。お母さんも言います。「子どもが好きです。でもなぜなのでしょう何か距離が」・・・母子家庭や、再婚した家庭。母も子もお互いに好きなのに、壁が出来てしまいます。

母も一人の人間。子どもが母の幸せを考えることが出来るまでには、長い時間が必要になります。

 「何度退学処分になってもおかしくない」と言う保護者の方からの手紙。公立の高校なら、確かに一度法律に触れるようなことがあったら、すぐに退学です。バイクで走ります。風の中をスピードを出して走ります。一人で走るだけの勇気はまだありません。誘われると断れません。バイクの一番後ろを走ります。警察はその一番後ろから捕まえます。少年の時の過ちは、いろいろあります。「だって、やってみたかった」と言います。公立の高校なら、やはり退学にしなければなりません。でも、ここでこの子を捨てたら、誰が拾うのでしょう。見捨てられません。

 拘置所にも何回も面接に行きました。何人もいたということですね。スリッパを履いて、廊下を歩いてきます。目を合わせると、もう泣いています。差し入れのジュース、泣きながら飲みます。この面接の時間内に、飲まなければならないのです。拘置所に入ると、どの子も字がきれいになります。学園にいるときは、きれいに書いてと言っても、なかなか読めない字を書くのに、ここを出てくるとみんなきれいな字になります。「ドアのない部屋から」と言う最初の本を出していますが、もうその子たちが、結婚し、家族を持ち、働いています。

 子どもの時には、間違いもします。ゆっくり話します。傍に寄り添います。見捨てはしないです。どんな時もいつもどこかで寄り添っています。

 人に迷惑をかけてはいけません。殴ったり、傷つけたりしてはいけません。風を切って走るのは、確かに気持ちいいでしょうね。でも制限スピードはあります。

 高校卒業の資格は、やはり今の日本の就職状況ではあったほうがいいです。今年もまた字がきれいになった子ども達が社会に出ていきます。役に立つ人間になっていってほしいです。