昨日は高校3年生の卒業単位認定テストの日でした。

時間になっても、ひとり生徒が来ません。電話をしました。「駅に行くバスが来ない」「家族はみんな出かけている」「駅まで遠い」・・・確かに、駅まで歩くのは少し時間がかかります。車で10分はかかります。だから歩けば、もちろん人によっては違いますが、1時間近くはかかるかも知れません。車で2時間かかるところを自転車で学園に来た生徒もいます。自転車で1時間かかるところを通ってきた生徒もいます。喧嘩して、学園から1時間半かかって駅まで歩いた生徒もいます。その生徒の家から、わずかのところから、駅まで走るバスもあります。「みんな出かけているから」の理由です。「自転車で来なさい」「タクシーで来なさい」と言っても来ませんでした。

 夜、家族と話しました。

「テストというのを、家族は認識していなかった」・・生徒は十分知っています。

「前の日に、いつもならどこどこに行くから送って行ってというのに、今回は何も言わなかった。

だから家族は仕事に出かけた」と言います。

バイトにはがんばって行きます。もちろん遠くの駅まで家族に送って行ってもらっています。

「そんなテストの日なら、家族は仕事を休んで学校に送って行った」と言います。

 「甘えさせたから」「甘えさせ過ぎた」と家族の中でも、もめました。

カナダの家族の話がまた思い出されました。「海辺の近くで溺れた子どもは救われるかも知れない。でも海の真ん中で子どもが溺れたら、どんなに子どもを愛していても助けることはできません。だから、私たちは子どもを社会の中で、一人で生きていくことができるように、いつも育てています」とカナダの知人。バーゲンで出たシャツ、それは自分がずっと欲しいと思っていたシャツ、今お金がない、必ず返すから5000円貸してほしいと言う子ども。でも、カナダの知人は「今、君がお金を持っていないなら、そのシャツは君のものではない。」と絶対に貸しませんでした。その長い話し合いを聞いていた私に、海の真ん中でも生きていけるように自立した子どもに育てていると言いました。

 テスト当日、体調が悪くて受験できない生徒はいます。もちろん対応します。

しかし、元気で、歩けば行けるところにバス停もあり、それでも家族に電話をし、連れて行ってと頼む生徒。まだまだ子育ての問題も含め、課題がいっぱいです。

来年の9月20日、受賞記念講演の演題は、子安増生教授の「子どもの育つ力」です。

卒業まで、あと3か月。家族と生徒と支えていきますが、時間はあまりありません。