80-50問題は今は大きな社会問題となっています。50代の初老の男性が、80代の母親に向かって「俺がこうなったのは、お前のせいだ」と叫ぶの初めて見てから15年くらい経ちます。

 今年3月末に、内閣府が発表した全国の40歳から64歳のうち、推計61万3000人がひきこもり状態です。少し前の平成27年に同じく内閣府が実施した調査では15歳から39歳の若者のひきこもりは54万1000人となっていて、中学を卒業してから、ほとんどを家にいて、家族以外の他人との交流を持たず、社会参加しない状態が6か月以上続くのを、ひきこもりの定義にしています。

 社会に出ることで苦しむのが多い人は社会に出なくていいと思います。しかし、こうしてずっと家にいるのもまた苦しいのです。薬も減らすのがいいと私も思います。では、どうしたら、薬がなく、人とのトラブルも少なく、その人がその人の好さをそのままに、薬に頼らず、住みやすい日々を送れるのだろうかと考えます。ひきこもりの青年、大人を見ますと、やはりこだわりを持つ人が多いです。

 私は、長沼睦雄先生の「発達障害を持つ子どもを成長させる12か条」をいつも意識しています。「活かそう 発達障害脳」です。大人になるほど、強くはなっています。

1・問題行動をなくすことより、適応行動を促す(良いほうを膨らます)

2・こだわりは否定せず、活かす方法を考える(こだわりを生かす)

3・禁止するときには、どうすべきかを教える(どうすればよいかを示す)

4・予告やリハーサルやスケジュールを示す(見通しを持たせる)

等と言った内容です。

こだわりを否定すると、もう一歩も前には進めません。生徒との関係も壊れます。話すことも拒否されます。音が苦手です。スパイになれると話します。親の内緒話も全部聞こえている子も多いです。小さな音が聞こえます。そのこだわりは周りの友達の声に悩まされますが、それを武器にできる方法はないかなどと、ひとつひとつをプラスの方向に持っていくことを話します。

 指導者は多くのドアを持っていることが大切です。どのドアを叩いたら、子どもが反応するか、同じドアの中と外でやっと話す準備が出来ます。違うドアの中と外でお互いの意見を話していても、解決は遠くなると思います。

 「異空間のドアを開けて」という本を出版したのは、平成25年2月です。2013年です。目の前の子ども達とのドア探しをまとめた本です。講演や訪問者に買って頂いて、もう残りも少なくなりました。感覚過敏を強さにしたいのです。こだわりを強みにしたいのです。専門家になれるのです。プロになれるのです。すばらしい力を持っている子ども達、青年なのです。

 中学を卒業してから、ひきこもりになってはいけません。

高校を卒業してから、社会から逃げてはいけません。自分をしっかり持って、どうすれば社会を

怖がらずに、苦しむことなく、生きていけるか、いつも子ども達、青年と話します。

そのためにも、自分が何が得意で、何が苦手で、挑戦し、努力し(努力の苦手な子が多いですが)できたことをほめて、自分でもほめて、(歯科院に行くのが苦手な子に、治療の帰りに思いきり好きなことをさせてあげるなど、ほめるプレゼントを用意するなど)、方法はあります。

 自分が自分のままに。成長していきます。ミスを怖がる子ども達がいます。ミスがあるから、成長するのです。ゆっくりゆっくり話します。同じドアの中と外。異空間のドアは開く時が来ます。

ひきこもりにはならないでください。一度の人生ですから。