もう20年経ったのですね。あの地下鉄サリン事件は、多くの人々の人生を狂わせました。多くの優秀な若者が、加害者になり、多くの優秀な若者が被害者になった事件です。医者になっている人が医者になろうとしている人の命を奪ったのです。私達の本校の卒業式にいつも出席されている日野原先生が聖路加病院で「これはサリンだ。」と解毒剤を地下鉄から次々に運び出される人々に投与。実に6000人以上が負傷、坂本弁護士一家が殺害され、このサリンで亡くなった人は29人にもなります。窓を開けて、英文の翻訳をしていたという信州大学医学部6年生の安元さんと言う女性も亡くなりました。精神科の医師を目指していたと言います。理由もなく、夢を奪われました。

 テレビ、新聞などで毎日、そしてもっと長く多く報道されていたこの悲しい事件を知らない若者たちが増えてきています。私達は中学、高校、大学時代、10代、20代とそれぞれさまざまな思い、考えを持ち、喜んだり、悩んだり、感動したり、苦しんだりして、その時代、その時間を過ごしてきます。一人の人間のマインドコントロールの起こしたこの事件は、今さらにその危険性を増していると思えてなりません。もっと深く急速にパソコン、スマホ等からの情報で広がっているのではないかと私は思います。「何が正しいのか」「何が間違っているのか」「どうあったらいいのか」人間として生きる道を教えるのは実に多くの時間がかかります。小学校、中学校、高校と長く確かな時間はあるのですが、子どもたちが自分の力で「どう生きるのか」「今これでいいのか」とその瞬間、その時を支えることがどんどん少なくなっているのが怖いのです。日本の社会が壊れていくような気がするのです。

 自分たちが自殺へと追い込んだ子の葬儀で笑った子どもたちがいます。「うざいやつがいなくなった」と言う言葉も、学校現場だけではなく、多くの日常の現場でもうコントロールできなくなった制御不能の状態

がまん延しているように思います。

 東京都の市議会での発言も、学校現場でのいじめと変わりません。ただそこでの大きな違いは、人間として優れていると多くの人々が投票して選んだ人々が、発した言葉と言うことです。まだまだ成長し学ぶ途中の子どもたちとは違って、私達の税金で生きている立派な人格を持った人間であるべき人々が、実に気軽に考えも深く持たない人たちがいると言う事実が露呈されたのです。そして、「自民党だけがアンケートに答えない」ように一斉に緘口令が引かれていたということです。一人ひとりが自分の意見を言えるように教育の現場では指導されています。「本音」が大事です。この「本音」も組織の中では言えないことが多い中で、「テレビのアンケートには答えるな」の一斉命令を出した人は一体自民党の中の誰なのか、

市議に暴言を発した人物は果たしてこのまま逃げ切るのか、みんなで隠すこの体質、石原氏の「やはり金目でしょ」の発言も同じです。自分たちの都合しか考えていない人間が、この日本の進む道を決めているのです。私達は今大きな危険性の渦の中に巻き込まれていくような気がしてなりません。