「箱庭セットをもらっていただけますか」という突然の電話が入りました。

河合隼雄先生がこの日本に普及した箱庭療法は、とても意味が深く、私自身も会員になって、23年になります。このフリースクールを開始する前も、文科省の通級指導教室を担当した3年間、この箱庭セットを教室に置いていました。授業のない時間、いろいろな生徒が箱庭をやりにきました。砂遊びです。自分の好きな物を砂の上に置くだけです。自由にゆっくりと休憩時間を砂の上に自分の気持ちを表現します。人間の形をしたものばかりをすべて砂の中にうめる生徒がいて、クラスでのいじめも発見できました。言葉をうまく表現できない幼児や、ことばで傷つく大人までの大切な心理療法の一つです。また福島の原発事故の時は、ゆずりは学園から福島の保育園、幼児園の園児たちに箱庭セットを送ることができたのは、2001年10月30日でした。新聞を通しての約10000個のおもちゃの協力があったからこそ、実現できたことでした。

 今は、100円店が増え、おもちゃ集めは少し楽になりましたが、生活、自然、人間の周りのすべてを小さな玩具でそろえるのは、かなり大変です。

 正式に購入すると、1セットが40万円から85万円にもなります。一つのおもちゃが3000円します。火山、木々、人間のお父さん、お母さんはじめ、幼稚園児などさまざまです。

今回の箱庭セットは、スクールカウンセラーをしていたという一人の先生からでした。

1994年に西尾市で起きたいじめ自殺事件をきっかけに、国が学校にスクールカウンセラーの配置を全国に呼び掛け、昨年度には全国の小中学校の1人以上の配置が完了していると思います。常勤制度が確認されたのは、名古屋市、滋賀、高知、福岡、沖縄だと発表されています。

非常勤がほとんどです。いじめが表面に出ることはなかなかありません。この箱庭セットはそうしたいじめの発見などのとても意味があると思いますが、心理職の養成機関が少ないこともあって、なかなか普及しません。

 箱庭セットをもっていらっしゃるのは、本当に数少ないカウンセラーの方です。

「辞めたいと思います」とのことでした。よほど、大変な相談があったのだと思います。現場の先生方と保護者の方、そして生徒の相談には、かなりの外には見えないものがあります。