突然のメールが入りました。「ジャパンタイムズの新聞で、潮風の電話のことを知りました。使わせてくださいますか」とのこと。8月9日とのこと。田原駅で待ちました。大きなリュックを背負い、ひとりの男性が近づいてきます。シモーネさんです。お母さんが亡くなったとのこと。ゆずりは学園に着いたのは、もう時間が遅く、電話を使うのは明日ということになりました。

 夕日が沈む三河湾を見ながら、しばし話します。私は、英語を話せますが、もう28年間日本に住んでいて、日本語がばっちりの彼でしたので、では夜のトーキングは、イタリア語の授業となりました。女性名詞、男性名詞、単数、複数、近過去、冠詞、主語、動詞は3つの種類、are動詞、amo,ami,ama,amiamo,amate,ano大学以来、本当に久しぶりの授業でした。夜が更けて、シエモアの部屋に宿泊です。

 今日の朝6時30分、潮風の電話に彼が入っていきました。5分以上経ったでしょうか。落ち着いた表情で「ありがとうございました」と、今はもう声も顔も見ることが出来ない愛しい人との会話です。

 入学式も、卒業式もない、担任の先生もいない、朝のホームルームもない、すぐに授業開始、そして午後1時くらいには下校。中学生でもとにかく授業が済むとすぐに下校。535制度のイタリア。小学生でも留年。クラスメイトとは遊ばない。同窓会も同級会、成人式もない、学校も少なく、大学も公立1つ、私立はないなど、日本とは本当に多くが違っていました。1990年に彼が日本で見た電車の風景は、みんな本を読んだり、新聞を読んでいたのに、今はみんなスマホばかり。赤ちゃんを連れたお母さんに対しても、妊婦さんにも席を譲らない日本になったと話してくれました。

 彼は、今日本の大学でも教えています。筆記用具を忘れても、隣の人に「貸して」と言わず、ずっとメモも取れない学生。

先ほど、三重県の方にフェリーで向かいました。わずかな時間ではありましたが、潮風の電話にイタリアからのお客さん。日本とイタリアの文化の違い。充実した素敵な時間でした。