「なぜ離婚したんだ。離婚さえしなければ俺はもっと違った人生を送れたと思う」と言いました。

盗みをします。万引きをします。その度に私は彼に話しかけます。

「人のものを取ってはいけない」

すると、「なぜ、取ってはいけない?俺にないのだから、ないものは取ればいい」

 駅から自転車を取ってきます。要らなくなったら、どこにでも捨てます。「なければ取ればいい」

その生徒の家に行って、台所にはインスタントラーメンを食べた後のカップがシンクを埋めています。タバコの吸い殻がテーブルの上の同じく食べた後のカップの中、そしてもうかなり長く、この台所は家族の食事に使われた形跡はないことが分かります。ガスコンロの上も同じ。

 生徒の家に行って、初めて「なければ取るしかない」家庭の実態を知りました。

きれいな机上論の虚しさです。学校現場は机上論であってはいけません。生徒の本音に向き合うことのすごさを大切さを同じ土台に立つことの大切さを知った20年前の日でした。

「なぜ離婚したんだ」と親を責めます。父親に殴られ、こどもを守るために離婚したケースも多いです。子どもを守るため、そして自分を守るため。どれも複雑な家庭それぞれの理由があります。

「だったら、なぜおれを生んだんだ」とまた責めます。子どもも親も苦しいです。

 フリースクールを起ち上げました。20年経ち、ますます母子家庭が増えています。民間のフリースクールを守る法律が出来ました。でもまだまだ全国でその法律を利用できる県は少ないです。

愛知県も同じです。県も国も何も支援してくれません。フリースクールの利用代金が無料になれば、もっと多くの貧困に苦しむ子どもを救うことが出来ます。明日、ゆずりは学園に寄付型の自販機が設置されます。