真面目な生徒でした。提出課題も期限内にいつも間に合いました。優しく、静かに笑い、東京の雑誌社の応募にも、1位と3位を同時に受賞しました。器用でした。高校卒業後には、その創作、制作の道に進むことを勧めました。すると、また静かに「1位を取ることが目的でしたから、もうこの制作はしません」と言います。高校卒業して、就職もしない、進学もしない、家にいた生徒。

 住んでいる市から、届いた1通の成人式の案内。

家族は、「学校にも行かない、また働かない、せめて成人式くらい出席したらどうだ」と青年を責めたそうです。すると、翌日、「働けない、また学校にも行けない、そんな僕は家族に迷惑をかけるだけです。」という言葉を残し、私たちの届かないところに行ってしまいました。

 そのことがあってから、毎年ゆずりは学園の成人式を行うようになりました。

毎年、成人を迎える卒業生は、20名から多い時は40名います。その中で、午前中にそれぞれの市で行われる成人式に出席する青年も多くいます。午前中をそちらに出席した後、午後のゆずりは成人式に出席する青年もいますし、ゆずりは成人式だけに参加する青年もいます。

 入学式も始業式も成人式もない国もあります。でも、この日本では節目の式があります。集団が苦手な生徒もいます。対人関係が苦手な生徒もいます。式が苦手な生徒もいます。

「せめて、それくらい」の言葉は大きな責めの言葉になります。

市内の成人式に参加したら、自分の名前はなかったと言う生徒もいました。中学校時代不登校だった生徒でした。その扱いも悲しいものです。

 全国で小・中学校の不登校数、16万4500人。

今日はゆずりは成人式です。